
■ 研究テーマ: 20世紀フランス文学、記号論
■ 略歴:
■ 研究領域
私は20世紀後半のフランスで活動した批評家であり作家のロラン・バルトのテクストを対象に、批評と小説のあわいを研究しています。
フランスの1960-70年代は、文学、思想、精神分析、言語学、政治、などさまざまな分野の知が交錯した時期でした。この時代に活躍した作家や思想家たちのテクストを読むことは、フランスの精神そのものに触れることだと言えるでしょう。私が大学生だった頃にバルトのテクストに惹かれたのも、こうした背景があったからかもしれません。
しかし、なによりも私の関心を引いたのは、この作家が晩年になると、自らの弱さを描いたり、近親者の死を経験し、絶望から立ち直るまでの過程をテクストに刻んだりするようになった点でした。批評家として対象物を論じてきたバルトが、ついには自らの人生や感情を綴ろうと試みた転換は、非常に大きな意味を持つものでした。
人間の「生」が描かれる文学作品は、自分の人生がうまくいかないときや、行き場のない気持ちを抱えているときに、ヒントや励ましを与えてくれます。私もまた文学作品に助けられ、ときにそれにすがりついたひとりです。だからこそ、フランスの知識人でありながらも、人間らしさをテクストに記したバルトに惹かれ、これまで研究を続けてきました。
■学生のみなさんへ
フランス語圏文化学科には豊富な資料が所蔵されています。書庫や開架書籍を見ていると、「これ、面白そうだな」「なんだか気になるな」と思うようなタイトルや表紙に出会うことがあるはずです。目的もなく書籍を眺めるのは無駄な時間のように思えるかもしれませんが、実はこれは非常に大切な時間です。なぜなら、このとき自分がどんなことに対して興味を持っているのか気づくことができるからです。ぜひフランス語圏文化学科の書庫や閲覧室に足を運んでみてください。また、なにかわからないことなどあれば、いつでも事務室へお越しください。