Professeurs

田上 竜也 教授

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■ 研究テーマ: 近現代フランス文学、フランス思想


■ 研究領域

主な研究対象は、フランスの作家ポール・ヴァレリー(1871-1945)です。彼は『若きパルク』や『魅惑』といった詩作のほか、あらゆる領域にわたる鋭利な批評活動によって、生前「20世紀最大の知性」と謳われるなど名声をほしいままにしていました。また西洋近代文学を貪欲に受容していた同時代の日本の知識人たちにとっても、彼は文字通りフランスおよびヨーロッパ近代を体現する存在であり、小林秀雄をはじめとする数多の作家・批評家・研究者が、ヴァレリーの文章を読み、それを触媒とすることで自らの思索を育んでいきました。
 そのような予備知識から、大学入学後いわば勉強のつもりで読み始めたのですが、最初に触れた『レオナルド・ダ・ヴィンチの方法序説』や『テスト氏との一夜』の(当時の自分にとっては)得体の知れない難解さに当惑しつつも、自意識の発する緊張感と迫力に満ちた文体に引き込まれ、さらにその後に読んだ『カイエ』の、精神が感性とせめぎあいながら言葉を産み出していく現場に居合わせているかのような感覚に魅せられて、そのまま今日にいたるまで、かれこれ30年も読み続けています。
 一般にはお堅い主知主義者とみなされがちなヴァレリーですが、その実、感性の惑乱に絶えず襲われたり、アカデミー会員になるため票集めに奔走したり、いくつものサロンに足繁く出入りしたり、俗物的な部分も少なからずありました。そうした人間ヴァレリーの弱さも、今となっては彼の多様な魅力の一部として共感できるような気がしています。
 それ以外では、やはり学生時代にかぶれ、小説観に決定的な影響を被ったヌーヴォー・ロマンや、フーコーなどの現代思想に関心を寄せています。また、ヴァレリー自身建築を扱った有名な『エウパリノス』という対話篇を書いていることもありますが、文学と建築との関わりも、今後の大きな研究課題のひとつです。

 
■ 私の授業
 ゼミではヴァレリーをはじめとする20世紀文学・思想の古典を読みます。テクストの正確な読解とその背景理解が主となりますが、言葉を単に記号として解読するだけではなく、作者が文章を紡ぎ出した内的発話の源を追体験するために、音読も重視していきます。文章のリズムや間合い、呼吸を実践し感得することは、意味や構文を正しく理解するにも必要なことであり、また自らフランス語の文章を組み立てていく際にも重要になってくるからです。