Professeurs

志々見 剛 准教授

shishimi.jpg ■研究テーマ: 16世紀のフランス文学・思想

■略歴

 2013年、ボルドー第三大学にて博士号取得。2015年、日本大学法学部助教。2017年より現職。

■研究領域

 私の主な研究対象は、16世紀のフランス文学・思想、とりわけモンテーニュの『エセー』という作品です。
 16世紀というと、日本でいえば戦国時代、随分と昔のことで、皆さんにはあまり馴染みがないかもしれません。当時のフランスは、遅ればせながらイタリアからルネサンスの影響がもたらされ、印刷術の普及と相俟って、学芸が目覚ましい発展を遂げた時代でした。その反面、宗教改革のあおりを受けて国内外の混乱がやまず、特に世紀の後半にはおよそ40年にわたって血で血を洗う宗教戦争に苦しめられています。
物を書き物を考える人々には苛酷な時代でした。一方では人間や世界についての知識が爆発的に増加して、膨大な情報の海の中で指針を失って溺れそうになり、他方では信仰に名を借りた迫害や殺戮という現実を前に、ルネサンスの掲げていた諸々の理想が打ち砕かれていくのを目の当たりにします。そうした状況の下、人間世界の地理的・歴史的総体の中に「今・ここ」にある自分をどう位置付けるか、そこでいかなる行動や判断の準則を採るべきかということが、切実な問題となったのです。
こうした問題を尖鋭的に扱ったのが、モンテーニュでした。「私は何を知っているかQue sçay-je ?」という言葉に端的に示される彼の態度はしばしば「懐疑主義」などと称されますが、これは決して知識の探求を放棄したり冷笑したりするものではありません。モンテーニュの出発点は、古今東西、貴賤も賢愚も文明の如何も問わぬ、人間というものの示すめくるめく多様性と不確実性です。これを鏡として彼は、人間の陥りがちな、自己のあり方や考え方に固執する偏狭さを暴露しようとします。そしてその上で、人間というもの自体について、そして彼自身の「私」という奇怪至極な代物について、過度の単純化や安易な断定を慎みつつ、あらゆる角度から吟味しようとするのです。こうした彼の思考の曲折は、研究などということは措いても実に魅力的で、何度読んでも倦まないものです。


■私の授業

授業では、モンテーニュを初めとする16世紀のテクスト、そしてアンシャン・レジーム期の小説などを取り上げる予定です。これらはいずれも、現在の我々のものとは異なる発想や文脈で書かれたものですから、まずはそうした違いを意識して、虚心に、丁寧に読み解いていきたいと思っています。
むろん、これは別に私個人の関心を押し付けようというものではありません。このように自分とは異質な何やらに忍耐強く付きあうことを通じて、皆さんがそこから、(私には及びもつかないような)面白い観点を汲み出してくれたり、自分の関心を――16世紀に限らず、フランスに限らず――深めるきっかけになってくれたりすれば、これにまさる喜びはありません。