Professeurs

大野 麻奈子 准教授

oono.jpg■研究テーマ: 20世紀フランス文学・演劇

■研究領域

 現在私が研究している作家サミュエル・ベケットの戯曲作家『ゴドーを待ちながら』は、舞台上で「何も起こらない」ということで初演当時にスキャンダルを巻き起こしました。実はこの作家の小説についてもやはり、「何も起こらない」と言えます。でも、どちらの場合においても「何も」というのは、伝統的な西洋演劇あるいは小説において期待されていることが「何も」起こらない、ということなのです。それでは、期待されてはいないけれどそこで実際に起こって、人の心を揺さぶっているものは何なのか。私の興味はそこにあります。具体的には、戯曲作品における「小説」性、小説作品における演劇性、ということを中心に研究しています。
  以前は、日本では『レ・ミゼラブル』の作者として知られているヴィクトル・ユゴーを研究していました。ユゴーからベケットへ、という変化は大きな転換に見えると思いますが、たとえば戯曲に関しては、従来の枠組みから脱け出すような作品を創ろうとしていた点において共通しています。また、作品のタイプも量もまったく異なりますが、二人とも詩・小説・戯曲と多岐にわたったジャンルで活躍し、上演可能と不可能のぎりぎりの境界線上にあるような作品を創ったのです。こうしてみると、私が惹かれるのは、従来の思い込みを揺るがすような芸術作品とそのダイナミズム、とまとめることができるかもしれません。いずれにしても、テクストを読む楽しさだけでなく、実際の舞台を見に行くという楽しさも皆さんと分かち合いたいと思っています。
 

■主な業績

・2001年12月 共著:Victor Hugo et la Bible(「新・新約聖書としての『レ・ミゼラブル』 」) Maisonneuve et Laroseより平成13年12月出版。 pp.29-70の« Les Misérables, un nouveau Nouveau Testament » が、パリ第8大学に1997年に提出したDEA論文を短く編集したもの。同書の前半は、指導教授Henri Meschonnic による論文。小さいながらも本という形にDEA論文をすることができたことができて嬉しかったのですが、いまだに不思議な感じです。

・2004年 « Voir ou ne pas voir » (「見るべきか、見ざるべきか」)in Fortunes de Victor Hugo, Maisonneuve et Larose. 2002年 11月 2日に東京日仏会館で開催された国際シンポジウムFortunes de Victor Hugo 「ヴィクトル・ユゴーの運命」にて発表した論文。
ユゴーの生誕200年記念ということで、すでにベケット研究をしていたのですが、でもどりで参加しました。初めてのシンポジウムということで、最高に緊張していたことが思い出されます...

・2004年10月16日 (パリ第8大学にて公開審査)博士論文:
La voix, le corps et le silence dans l'œuvre de Beckett (『ベケット作品における声、身体そして沈黙』)。口頭試問のあとには、シャンパン(指導教授の名にかけたわけではありませんがHenriot)とマカロンでうちあげをしました。まさに、恐怖のあとの快楽。

・2006年  « Le roman du théâtre : La dernière bande et le "reste" didascalique » in Samuel Beckett Today / Aujourd'hui, Présence de Samuel Beckett. Presence of Samuel Beckett. Colloque de Cerisy, Rodopi, Amsterdam- New York, 2006, p.351-363.
2005年8月にフランスのCerisyで行われたシンポジウム Présence de Samuel Beckett で発表した論文。Samuel Beckett Today / Aujourd'hui は、英仏二言語併用の貴重な学術誌なのですが、この号には学会の会場であるスリジーのお城をはじめとして周辺の写真も何枚か入っていて、まさに豪華版です。

・2008年  « Actes sans paroles, paroles sans scène » in Samuel Beckett Today / Aujourd'hui, Borderless Beckett. Beckett sans frontières. Tokyo 2006, Rodopi, Amsterdam- New York, 2008, p.403-412.

 

■最近の活動

 2006年はサミュエル・ベケットの生誕100年目だったので、早稲田大学21世紀COE
主催による国際シンポジウムBorderless Beckett(9月29,30、10月1日)に、実行委員のメンバーとして参加しました。大規模なシンポジウムだったので、1年以上前から準備に参加したことは私にとって貴重な体験でした。シンポジウムそのものでは発表のほかに司会もしたのですが、自分の発表も含めて、 まだまだスタミナ不足だと実感しました。