Cursus de troisième cycle de langue et littérature françaises

授業紹介 :勝沼祐樹(博士前期課程)

博士前期課程の勝沼祐樹です。私はボードレールのカトリシズムとの関わり方について研究しています。悪の追及が善に迫ることになるといったようなカトリック作家特有の論理が、ボードレールの場合はどのように表れているのか、今年度はプレイア-ド叢書の読み込みを中心に研究しました。

そこで私が指導をお願いしている、中条省平先生の授業について紹介します。今年度、中条先生は大学院で「フランス文学演習―フランス心理小説研究―」という授業をなさいました。

前期はRaymond RadiguetのLe Bal du comte d’Orgelを取り上げて参加者で一字一句読み下していく授業であり、後期は一人一人がフランスの小説について発表するというものです。

前期の授業では一回の授業で数ページについて文法、訳文の選び方、単語がもつ歴史やテーマ、過去の翻訳といったさまざまな角度から徹底的に読み込んでいきます。また、シラバスにお書きになっている通りこの作品には翻訳が多数あり、それらとの比較も授業の主軸のひとつです。

中条先生の説明はきわめてわかりやすく、また必ず新しい発見があります。

たとえば、ラディゲがヒロインを形容する「créole」という一語には「海外でぬくぬくと快楽的に暮らしてきた人」というイメージが反映されており、ボードレールの「あるクレオールの貴婦人にÀ une dame créole」が大きく影響していると指摘なさいました。

また解説の際に挟まれる映画や絵画、マンガや音楽といったフランス文学を超えた領域への言及と影響関係の指摘も中条先生にしかできないものです。

 後期の授業は、一人一人が任意の作家、作品を選んで自由に発表し、それについて先生をはじめ参加者全員で意見を出し合うというものです。

 発表があったテーマは「フランソワ・モーリヤックThérèse Desqueyreuxにおけるブルジョワ婚について」「ルナールとアゴタ・クリストフの比較研究」「エクトル・マロ『家なき娘En famille』とフランス児童文学史」「サルトルの[意識]について」など多岐にわたります。

 私は「Fromentinの Dominique (1862)におけるロマン主義」と題して、画家としても名声を博したフロマンタンの小説にみられるロマン主義の行き詰まりについて検討しました。この作家を選んだのは、自分の研究対象であるボードレールとほぼ同時代を生きた作家であり、また翻訳が古く、知られていない作家だと思ったからです。

発表について、中条先生からは「ロマン主義という観点からみた場合、画家としてのフロマンタンと作家としてフロマンタンの間には開きがあるのではないか」という重大な指摘をはじめ、「プルーストとの記憶に対する態度の違い」や「ミュッセ『世紀児の告白』との関係」などについてご指摘いただき、その視点の鋭さに驚くとともに、フランス文学史を生き生きとしたものとして受けとめなおすことが出来ました。

 総じて中条先生の授業は、授業以前にかけた努力が必ず返ってくる授業です。決して易しくない授業にも関わらず、学部生や他学科、他大学の学生が最終回まで参加していた事実が、その魅力を語っていると思います。 

(※授業内容は平成22年度のものです)

平成23年4月